CHAPTER 19

みんなのおうち

いま描いている場所

旅と現場で見てきたことを、これからどんな場所につなげたいですか。

たくさんの想いを集約していくと、「教育」にたどり着きます。とはいえ、私は教えたいわけでも、育てたいわけでもないんです。命は、勝手に育ちます。それを邪魔しない環境をつくりたい。

子どもたちが自然と、「この地球は人間だけのものじゃないんだなぁ」と、体で感じられる場所。違いが当たり前にあって、意見が違うことが当たり前で、その中で、喧嘩ではなく、思いやりや距離や呼吸を通して、関係性が編まれていく。子どもたちが、その感覚を持ったまま大人になれる場をつくりたい。それが、今の私がいったんたどり着いた、ひとつの答えです。

それが、「みんなのおうち」。

いちばんの土台は、小学生の頃から思い描いていた、行き場のない動物たちの終の棲家になるサンクチュアリです。そこに、保育園やフリースクール、学童、シニアホームやホスピスが併設されている。障害のある子どもたちも、たくさんいる。

ホームレスの方は、3か月間、期間限定で、働きながら寝泊まりできる。ネット環境やスーツを借りて、社会と再接続するきっかけにしてもらう。

動物たちも、それぞれのニンゲンも、当たり前にその場に存在して、交わったり、交わらなかったりする。“村”ではないんです。人は出たり入ったりしながら、変わっていく。あるのは、『みんなのおうち』という理念を共有する場、という機能だけです。

工房との協業、という構想もあるそうですね。

障害のある子や、障害のある方の生活の中で、「こんなのがあったらいいのに」と、けっこうたくさんのご家庭が思っているのに、需要が少なすぎて商品になっていないものが、たくさんあるんです。

障害のある子どもたちが集まる場と、工房がコラボして、その場でニーズや声を聴きながら、試作しながら、必要な人に便利なものを届けられるようにしたい。

そして、そこを、障害のある子の親が「職場」にできたら。働いて収入を得ながら、子どもとの時間も確保できるんじゃないか、と思っています。

ご自身のニーズから始まっている。

そうなんです。他人のニーズから始まっていないという点では、プロダクトアウトの動きかもしれません。でも、私が喉から手が出るほど切望したものを、ぎゅっと凝縮して、つじつまを合わせた。

まるで夢のような、「私のニーズ」そのままの世界です。

障害のある子の家族が集まることには、別の意味もあるそうですね。

「親亡き後」の問題にも、効果があると思っています。みんなのおうちに障害のある子の家族のコミュニティができていれば、急に何かあっても、絶対に誰かの目があるし、手がある。

大人になって自立していく子がいてもいいし、ここで畑や動物の世話をしたり、掃除をしたりしながら暮らしていく子がいてもいい。いろいろな課題が、一挙に解決するんです。

もちろん、実際にはたくさんの問題や課題に直面するだろうし、一筋縄でいくとは思っていません。

でも、私の理想郷です。

名前に込めた意味は。

三つあります。

ひとつは、地球という土地は人間だけのものじゃないよね、ということ。人間だけにフォーカスした社会ではなく、みんなのおうちに生かされている、という感覚。

ふたつめは、いつでも帰っておいで、あなたはひとりじゃないよ、というおうち。

三つめは、みんな家族みたいなもんだよね、ということ。背景も、身体も、見た目も、世界観も、信念も、みんな違う。でも、違うことで喧嘩しなくてもいい。

自分を守るために、誰かを攻撃したり、
誰かをコントロールしなくても、大丈夫なんだよ。
コントロールは、いらないよ。

いまは、どこまで進んでいますか。

オンラインの場は、すでに始めています。今は休眠していますが、一日も早く復活させたい。

リアルの場所は、栃木にあります。管理人が決まったので、来年度から、場づくりが始まります。